考察

最高の根管充填法とは

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根管治療 論文

根管充填とは根管内をできる限り無菌化した後に、この状態を維持するため根管内に薬を詰める治療法で、大きく分けて2つの目的があります。

一つ目は、根管治療(歯内療法)の機械的化学的清掃拡大によって無菌化された根管を再感染させないために、根管と根尖歯周組織をつなぐ感染経路を封鎖することであります。しかし、実際には根管の完全な無菌化は困難である。なぜならば、歯の象牙質には象牙細管があり、その細管の直径は0.8~2.2μmであるのに対し、ブドウ球菌やレンサ球菌といった細菌の直径は0.8~1.0μmであり、細菌は象牙細管内に侵入することが分かっています。すなわち、機械的化学的清掃拡大を施しても、取り除くことができない僅かな細菌が根管内に残存します。

この除去しきれなかった細菌や炎症を起こす起炎因子の不活性化をさせるのが2つ目の目的であります。象牙細管内に埋没する細菌へ栄養源の供給を断てば、細菌や起炎因子は再増殖することはなく、再発の防止を図ることができます。

根管内の細菌を除去すれば、治療回数や治療時間に左右されることなく根管充填に移行すべきであります。事実、痛みや排膿などの症状がなければ、根管治療を1回で完了する方法(即日根管充填)と根管治療を数回行ったものとの間に有意差は無いことが証明されています。米国の根管治療専門医では抜髄根管治療(初めて神経を取る根管治療)は即日根管充填するのが一般的であります。

次に、根管充填剤といえば古くからガッタパーチャが用いられ、熱容量の異なるα型とβ型の2つの結晶型がある。α型を65℃以上加熱すると非結晶型となり、時間をかけて徐々に冷却するとα型に再結晶し、早く冷却するとβ型となる。ガッタパーチャは60%が結晶化しているため、天然ゴムよりも硬く、弾性も小さいのが特徴です。

現在、根管充填はガッタパーチャを成分に含む根管充填剤をシーラーとともに使用し、加圧しながら充填する方法が主流となっている。加圧充填法は大きく分けると、β型のガッタパーチャポイントを用いる側方加圧充填法と、α型を用いる垂直加圧充填法の2つがある。

米国歯内療法専門医の根管充填法のアンケート調査によると、垂直加圧充填法(continous wave of condensation technique)CWCTが48%、側方加圧充填法が43.6%であり、症例によって複数の根管充填法を使い分けていることが考えられます。

垂直加圧充填法では、加熱軟化したガッタパーチャのフローを利用して流し込むため、枝分かれした側枝根や網状に分岐した根尖分岐など、根管の隅々まで薬を充填できるようにみえ、側方加圧充填法よりもレントゲン的には優位に見える。しかし、軟化したガッタパーチャの根尖孔外への溢出を制御できない欠点もある。

根管充填後の予後に関して両者に差はみられない。最高の根管充填法は、術者が身に着けた熟達した方法であるのですが、症例に応じて使い分けるのが大切だと思う。

近年、米国で根管充填の主流となりつつある方法は、垂直加圧と側方加圧充填法の両方の利点があるサーマフィル法である。

サーマフィル法は根管の拡大形成後に、根管の先端径とテーパー度を確認する。サイズを確認したら根管に適合するサーマフィルを選択し、長さを合わせて根管内にMTAシーラーを塗布した後、専用の機械でサーマフィル・ガッタパーチャを軟化して、根の先端まで図った長さまでゆっくり挿入していく。それで終わりである。

垂直加圧充填法の中で軟化したガッタパーチャを根尖孔外へ押し出さない利点もあり、過剰に歯を削らなくて良いことから、細く湾曲した根管の充填にも対応できる。

難易度の高い根管充填には必須のテクニックである。

 

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