考察

現代の歯科患者の傾向と、なぜこの傾向にあるのか?

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論文

今の患者の傾向は、インターネットやスマホの普及もあり、情報量が多く、歯科的知識(

デンタルIQ)が高い人が多い傾向にあります。

では、ネットの情報はどうかというと、正しい情報とそうでないものとが交錯しています。

現代社会は正しい情報とそうでないものを判別することが困難な時代でもあります。

まず、何をするにしてもgoogleで検索をします。

例えば歯磨き粉を買う場合でも、どこが一番安くて、なにがベストバイか、お得なクーポンがあるかどうかなど、ひととおり調べてから買い物をします。

病院選びや治療法の選択も同じで、自分の症状や希望を入力、検索してから治療に行くのが当たり前の時代になってきています。そこには医師の無料相談などもあり、ネットの相談だけで審査診断・治療の見積もりまで要求してくる人もいます。(しかし、正確な審査診断はネットでは不可能です。)

言ってみれば、現代社会は失敗が許されない社会と言っても過言ではありません。

それでは患者さんの傾向が本質的に変わったのかというと、そんなことはありません。

相変わらず、虫歯の患者さんは大勢いますし、歯周病の患者も若年者まで広がっています。

患者の傾向は本質的に変わりませんが、無病の方が増えている傾向があります。

無病とは何かというと、虫歯や歯周病ではない、病気ではない患者のことを言います。

歯石や歯垢を取り、虫歯の有無を定期的にチェックにお見えになる方や、歯を白くホワイトニングを希望する方や、口臭が気になるために来院なさる方などです。

世の中の清潔志向の高まりや審美的な要求度の高まりなどにより、ホワイトニングやドライマウス(口臭)などを気にする患者が増えてきています。

そして、もう一つの傾向としては、高齢化医療があります。

高齢化と言っても、いわゆる老人のことではありません。従来の単なる高齢者というくくりではなく、今後の高齢化社会において時代をリードしていくと思われる団塊世代を含んだ50代以上の生活者「エルダー世代」(ELDER:年長者・先輩)のことです。

かつての高齢者とは違い、エルダー世代は自由なお金と時間を持った金時(きんとき)持ちでもあります。長い人生経験を積み、多種多様な意識を持った魅力的な世代です。

このような時代の流れのなか、医療業界でも高齢化対応が進んできています。

この高齢化医療とは、老化を研究する老年医学のことではなく、老化に抵抗するための医療です。いわゆるアンチエイジング(抗加齢)医学のことです。

かつて老年医学会が想定した高齢者とは、齢を取って身体機能が弱まりやがて病気になり、ついには介護老人を経て死に至るというものでありました。つまり、老化は止められないものであり、老化特有の病気の解明とその治療法の確立が老年医学の命題でありました。

マスコミが作り出した高齢化社会のイメージはいかにも暗く、高齢化社会イコール社会活力の低下、経済不況、年金破たん、介護問題といったやりきれないマイナスのイメージばかりです。

しかし、現実には若者と高齢者の間にはエルダー世代という大集団が存在し、この世代はおおむね健康で介護の必要性がある人は一割にも満たず、経済的にも時間的にも恵まれています。日本人の個人資産1400兆円の7割と約7万時間の余暇を保留していると言われています。

時代をリードしていくエルダー世代は、言葉は悪いのですが、わがままであり、その意味でも手ごわい相手です。

彼らは早くて痛みのない快適な医療を求め、より機能的で美しい治療効果を求めています。

そして、エルダー世代の望みは、男女を問わず「若く、美しく」にあります。

エルダー世代が他人に言われてうれしい褒め言葉の一位は「若い」だったそうです。しかし、その一方で、この世代は若くて美しいことを正面から受け止めることに躊躇する世代でもあります。ですから、われわれ治療家は、この秘められた望みを受け止める必要性があります。

現代の歯科治療における審美治療や成人矯正、インプラント治療、アンチエイジング治療への急速な高まりは、時代のニーズであり、エルダー世代の求める医療への対応として不可欠なものではないでしょうか。

 

この傾向に伴い日々のデンタルケアをどのように行えばよいですか?

日々のデンタルケアはイエテボリ法というみがき方で行うことをお勧めします。

歯医者での歯磨き指導で、ハミガキ粉は、「歯ブラシにちょっとだけ付けて」とか、「付けないで」とか、言われた事が有るかと思います。

しかし、それはちょっと時代遅れの指導法です。

 

予防歯科の先進国スウェーデンでは、イエテボリ大学が推奨する磨き方がスタンダードとなっています。それは、フッ素の入っているハミガキ粉を2センチくらい、たっぷり歯ブラシにのせて磨き、磨いた後は10ミリリットルの水を口に含んで30秒間クチュクチュします。そして、吐き出した後は一切ゆすぎません。また、ハミガキ後の2時間は一切、飲食をしてはいけません。

 

イエテボリ大学ではなぜ、ハミガキを2センチも付ける様に指導されているかと言いますと、フッ素の効用を期待しているからです。フッ素は子供の虫歯予防と思われがちですが、大人にも、特に中年以降にはとても効果が有ります。

 

それは、人間も年をとってくると、誰でも歯茎が下がって、根っこの部分が出てきます。ここの部分は、弱酸性(pH6.2)でも溶けてしまうくらい、虫歯菌が作る酸に弱いのです。(ちなみに、歯の頭の部分のエナメル質はpH5.8で溶けだします。)

 

つまり、中年以降(エルダー世代)になりますと、若い人と違って、歯茎との傍に虫歯が出来やすくなるのです。これを根面カリエスと言います。

 この根面カリエスを予防するには、フッ素が最も効果的です。

 その為には、成人ならばフッ素入りの歯磨き材を2センチはつける必要があります。

 そして、10ミリリットルの水は結構少ないです。つまり、あまりうがいしないと言う事です。これもフッ素の成分を口の中に 残すためです。

 2時間は飲み食いしないのも、フッ素の効果を長続きさせるためです。

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