考察

再生歯内療法とは

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根管治療 論文

再生歯内療法(Regenerative Endodontics)とは若年者の根未完成歯に対する根管治療の1つとされていて、抗菌剤による滅菌と意図的出血によって硬組織(歯根の先)を再生させ、歯根の長さと厚みを増して成長させるという新しい治療法です。最近では神経が死んでしまった歯髄壊死を伴った歯根完成永久歯にもこの方法が応用されてきている。

再生根管治療により、根管の機械的拡大を行わないで滅菌・消毒薬で洗浄し、意図的出血と根管封鎖を行うことによって歯根完成永久歯の感染根管を患者自らが作った硬組織で充填・封鎖するという治療が可能であるなら、それは革命的な夢の治療法である。

再生歯内療法の適応症にはいくつかの特徴があります。患者の年齢は8~18歳で、根尖は未完成な歯である。若年者の治癒能力は高く、幹細胞の増殖能力も強いので、年齢は重要な因子といえます。

全ての適応症に共通する重要な術式としては、根管壁の機械的拡大は行っていないことであります。根管拡大(リーマーなどで削る)を行わないことは、象牙質壁および象牙細管を閉塞するスメアー層(削りカス)を生成させないという利点もある。削りカスがなければ象牙細管内の滅菌・消毒を効率よく行うことができる。

次に消毒の術式ですが、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は根管内の滅菌・消毒に有用であり、多くの症例では、3Mix-MP
(ciprofloxacin/metronidazole/minocycline)
の3種類の抗生物質を混合したもの、または水酸化カルシウムを数週間根管内に貼薬する。いわゆる化学的方法が非外科的歯内療法として行われ、根管内に形成された血餅は、3次元的な組織増殖を助けるタンパク質の足場の役名を果たすとされている。

ほとんどすべての症例で、根管壁は継続的に厚みを増し、根尖は閉鎖する。しかし、その硬組織は組織学的には象牙質ではなく、セメント質や骨であることも分かっています。

治療のポイントは適応症例の選択と治療手順である。

この治療法が適応される最も適切な症例は、根尖が広く開口していて、歯髄が死んでいる歯根未完成永久歯であることが条件である。

治療手順は第1回目にラバーダム防湿を行い、根の長さを決定することが重要である。根尖が大きく開口しているので根の長さを決定することが難しい場合が多い。この作業中に患者が痛がる場合、根管内歯髄が残っている可能性があるので、次亜塩素酸ナトリウムやクロルヘキシジンで洗浄してからよく乾燥させ、3Mixあるいは水酸化カルシウムを貼薬し、厳密な仮封をし、次回は1~3週間後に予約をします。

第2回目の予約では、初診時にみられた急性感染症状である腫脹、排膿、疼痛が治まっているかを調べます。治まっていれば再生歯内療法のための意図的出血を行います。この時に止血剤を含む麻酔薬は使用しません。根尖より2~3㎜超えた部位まで細いファイルを回転させて根尖組織を損傷させて出血させます。根管内に血液が満たされ、血餅が出来たらその上に吸収性基質を置き、MTA剤や水酸化カルシウムで蓋をしてコンポジットレジンや永久セメントで充填作業をします。術後12~24か月後にレントゲンを撮影し、歯根が成長しているか確認をして歯冠修復治療に移行します。

 

再生根管治療の究極の目標は歯根完成永久歯の感染根管の治療であります。

その成功にためには、幹細胞、成長因子、足場の3因子が正しく統合・構築される必要があります。

通常の根管治療においても、再生根管治療のフィロソフィーを継承し、根管壁を必要以上削らずに化学的方法が非外科的歯内療法を原則的に行えば、根尖部は患者自身の再石灰化で生理的に封鎖されるであろう。

再生とは失われた組織が隣接する生きた細胞の増殖により完全に元の状態に回復することと定義されている。再生根管治療による治癒は、本来の再生ではなく、創傷の治癒もしくは修復というべきかもしれない。

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